サムライ(と)うさぎ
迷いの竹林。人間の里から見て妖怪の山の正反対に位置する竹林。その竹林の中に人目を避けるかのようにひっそりとその屋敷は存在する。
屋敷の名前は永遠亭。みなさんこんにちは。鈴仙です。一応正二塁手という肩書きがあったのですがいまや見る影も無いです・・・
美鈴さんかてゐに正二塁手の座を奪われるのも時間の問題な気がします・・・
現に今も二軍で燻っていて永遠亭で一人掃除中です・・・鈴仙です・・・鈴仙です・・・
「い、いけない!こんなネガティブ思考じゃダメ!」
と気を吐くものの・・・一軍定着を目指すには私にはもう一つ足らないものがある・・・そう、打力だ。
以前河童が作った測定器で私のパワーなるものを測定してもらった時に出た数値・・・
いやー・・・まさかあの氷精以下だとは思わなかったなぁ・・・しかも野手内じゃ私の下って大妖精しかいなかったっけ?
あの日はあれからずっと塞ぎ込んでたなぁ・・・?アハハ・・・なんか世界がエコノミーに・・・
「だ、だからネガティブはダメェェェ!」
流石に技巧値(ミート力だと思ってください)はそこそこだったがそれでも美鈴さんには負けている。
打力は完全に引けをとっているのでいくら守備が良くても(というかほぼ互角だが)
汎用性の高い美鈴さんや勝負強いてゐの陰に隠れることは必然。
打力向上無くして鈴仙・優曇華院・イナバの正二塁手奪還への道は無い。
うぅ・・・せめてもっとバントを上手に決めてたら・・・あ。バントは厄神様の方が上手かったっけ・・・
「ひょっとして私ってかなり中途半端なのかなぁ・・・」
「何をそんなに塞ぎこんでいるんだ?」
振り向くと・・・ボブカットに緑の服。腰に刀をさげた少女が立っていた。
鈴「あ、こんにちは妖夢。何か師匠に御用?」
妖「ああ、うん。薬が欲しくて」
鈴「でも私が見たところ妖夢に病の気は見当たらないけど」
妖「あ、違うんだ。幽々子様用に。な」
亡霊でも病気にかかるんだなぁ。あ、そういえば師匠もこの前風邪ひいてたっけ。
鈴「なるほど。で、病気ってのは風邪?」
妖「え?いや、風邪じゃないんだ」
鈴「あ、傷につける薬とか?だったらケガの症状を教えて欲しいんだけど」
妖「・・・そんなんじゃ・・・ないんだ」
鈴「え!?まさかあの吸血鬼みたいに肉離れ?そ、それともまさか骨折!?」
妖「それも・・・違う・・・」
鈴「し、信じられない・・・あの亡霊がそれ以上の大怪我をするなんて・・・あの球場の力・・・どれほどのものだというの?」
妖「・・・」
鈴「こ、こうしちゃいられない!すぐに師匠に連絡を!」
妖「食べ過ぎ・・・」
鈴「何を言ってるんですか!食べ過ぎなんでしょ!?はやく師匠を呼んで一刻も早く白玉楼に・・・・・・え?」
妖「食べ過ぎ用の薬が欲しいんだ・・・」
鈴「ゴメン。私の耳おかしくなっちゃったみたい。もう一回病名教えてくれる?」
妖「だから幽々子様が食べ過ぎて調子崩しちゃったからそれ用の薬が欲しいんだよ!!!」
鈴「そんな氷精でも吐かないような嘘に私が引っ掛かるくぁぁぁぁぁ!!!」
少女弾幕ごっこ中...
10分ほどの弾幕ごっこの後、冷静に話を聞くとどうやら本当に食べ過ぎて体調が悪くなったらしい。
事の起こりはタートルズ対カープ(17話)観戦時。いつものように西行寺幽々子は際限なく食べ、際限なく飲んでいた。(らしい)
妖夢は「いつものことだよ・・・」と言っていたがその後はいつものようにはいかなかった。(らしい)
翌朝になって急に苦しみだしたのでこれは一大事!と思った妖夢は白玉楼の病気に詳しい幽霊を呼び診てもらったところ・・・
鈴「食べ過ぎだったと?」
妖「そういうこと・・・」
師匠の風邪と同じでこれもあの球場の力のせいなのかなぁ・・・だとしたら恐るべし幻想郷スタジアム。
鈴「ハイ。これが食べ過ぎ用の薬ね。これを機に食生活を改めるよう言ってみたらどう?」
妖「ハハ・・・そうしてみようかな・・・ともかくありがとう。礼を言うよ。」
鈴「ところで・・・妖夢」
妖「なんだ?」
鈴「私の気のせいかもしれないけど・・・もしかして何か悩み事ある?」
妖「・・・何故そう言える?」
鈴「普段とは違うもやっとした波長を感じたからね。そんな気がしただけ」
妖「・・・」
鈴「私でよければ相談相手になろっか?・・・出番以外なら」
妖「・・・とりあえず今心に負った傷用の薬が欲しいかな・・・」
鈴「・・・・・・ゴメンナサイ」
妖「いや、いい。でもまずは薬を幽々子様に届けないといけないからな・・・夜、夜雀の屋台でいいかな?」
鈴「了解したわ。それじゃ、お大事に~」
そういって刀をさげた少女は永遠亭を後にした。あの庭師の悩みなんて主人の事くらいと思ってたがどうやらそうではなさそうだった。
まぁ変な悩みを抱えてプレーに影響が出ても困る。彼女だってタートルズに必要な選手なんだから。
鈴「さて、医者らしくカウンセリングといきますか」
あんたは医者の弟子だろ?
鈴「・・・ほっとけ」
◇
妖「わらしらってねぇ・・・やるときゃやるんれす・・・エラぃ人にゃそれがわからないんれす・・・」
・・・ありのまま起こったことを話します。
カウンセリングをするつもりだったのにいつの間にかヨッパライに絡まれていた。
何を言ってるのかよくわからないでしょうが・・・私にも今の状況が理解できない。アンインストールしてしまいたい・・・
てかなんでこの人こんなにできあがっちゃってるんです?
妖「客も客でぇ・・・揃いもしょろって、みじゅくものーって・・・うぅ」
鈴「ま、まぁ・・・私も凡退したときは『やさしいなぁ』とか皮肉られますしね」
妖「わらしへのは唯の罵声れす!あなたとはちがうんれす!!」
鈴「は、はいいいい!」
まぁ確かに妖夢が凡退したときの野次は一際大きい。
タートルズでも1,2を争う・・・いや、1,2は別次元だから・・・
3,4を争う大きさだ。せめて期待の裏返しの野次だと思いたい。
鈴「(まさかホントに出番のことで悩んでたとはなぁ・・・)」
妖「・・・だいたぃ・・・ウチにはぁ・・・バケモノがおおすぎるんれすよぅ・・・」
魂魄妖夢とは一言でいうなら普通な選手である。
それほど飛びぬけた能力を持っているわけでもなく、打率もそこそこで守備も無難にこなす。
制限があるものの二塁もこなす。4番1番はきつそうだがその他の打順であればそれなりの働きはするだろう。
特徴があるとすれば両打ちである。ということか。
いずれにせよ小回りがきくのでいたら助かる。いないと困るといった感じの選手であろう。
・・・他のチームならば。
悲しきかな曲者揃いのタートルズではそのような長所などあって無いようなものであるのが現状だ。
両打ちという技能は彼女よりもさらに上を行くステータスを持った咲夜の存在で霞んでしまっているし、
クリンナップに置こうにもレミリア、フラン、藍、妹紅、幽々子と張り合える打力ではない。
代打で出そうにもあまり勝負強いとはいえない為に萃香や慧音の陰に隠れ、同じ勝負強さでも選球眼でにとりに劣り、
代走にはスタメン落ちした射命丸がいれば論外。そうでなくとも走塁盗塁センスに優れたてゐ鈴仙がいるため使われることはあまりない。
守備では俊足の射命丸、選球眼や体格に恵まれ、強肩の小町の存在に押されており、
守備固めで出すような守備力を持っているわけでもない。むしろ代えられるポジションにいる。
また、あったとしても大妖精の存在が立ちふさがる。
まさに器用貧乏という言葉がふさわしい・・・が器用貧乏さにおいても守備範囲やバッティングで上位に立つ美鈴がいる。
というのが魂魄妖夢の不遇さをさらに際立てている・・・
幸い吸血鬼がナイトゲームにしか出れないのでデーゲームには出番がかろうじてあるのだが・・・
ミスティア「あのー。そろそろ店しまいたいんだけど~」
鈴「いや、そんな事言ってもこんな状態の妖夢連れて帰れないよ。せめてもうちょっと醒めるまで待ってくれない?」
ミ「そんなの~私の知ったこっちゃないってゆ~か~」
鈴「・・・って従者が邪険に扱われた。と白玉楼の主人に報告しても良い。と」
ミ「気が済むまでごゆるりとおくつろぎ下さい」
妖「うぅ~」
鈴「・・・やれやれ」
悩みを抱えていたことは分かっていたがここまで深刻だったとは。
この悩みは早急に解決しなくては魂魄妖夢という選手はシーズン終了までダメになってしまうかもしれない・・・
最悪の場合、その後の私生活もこのシーズンのトラウマを引きずっていくことになりかねない
鈴「でも・・・どうすれば・・・」
妖「・・・うどんしゃん」
鈴「え、何?妖夢?水がいる?」
妖「私ね・・・夢があるんれすよ・・・」
鈴「夢?」
酔いは少し醒めているみたいだった。滑舌も先ほどのスーパー自虐タイムよりかは良くなってきている。
鈴「それってどんなの?」
妖「私・・・いっかいでいいから・・・ホームランを打ってみたいんです・・・」
鈴「ホームラン?」
妖「妹紅さんや・・・レミリアフラン達がホームラン打つたびに・・・羨ましいな~って思うんれす・・・
タイムリーやファインプレーとは違う・・・お客さんの喜びかたが・・・それを共有できるあの人たちが・・・
ゆゆこ様のホームランも・・・れんしゅうしあいらったけど・・・それでもお客さんは大喜びで・・・
ダイヤモンドをゆっくり・・・かけまわるしゅがたも・・・とってもかっこよくて・・・」
鈴「・・・」
妖「しあいを決める一打じゃあなくても・・・だめおひ点じゃなくても・・・ついげきとか・・・
おいつかないていどの反撃でもいいんれす・・・打ってみたいなぁ・・・ホームラン・・・」
その言葉を最後に魂魄妖夢は沈黙した。
鈴「寝ちゃったか」
ミ「どうするの~?流石にウチには置いとけないよ~?」
鈴「背負って帰るよ。ゴメンね。無理言って残らせてもらって」
ミ「い~よ~。その代わりこれからもご贔屓に~」
鈴「ハハ。今度兎角同盟の忘年会はここで開かせてもらおうかな」
そう言って夜雀の屋台を後にした。まずは白玉楼にこの酔い潰れを運ばなきゃな。
道中。私は妖夢のことを考えていた。
鈴「今妖夢を苦しめてるのは劣等感によるストレス。
これを取り除いてやれば、貴女は今以上に実力を出せるはず。
酔った拍子に言ってたな。ホームランが打ちたいって。
これを達成できれば、妖夢は自信がもてるはず。
なんとか、かなえさせてあげたい。
妖夢の友人として。こんなに苦しんでいる妖夢をこれ以上見たくない」
そうこう考えているうちに白玉楼に着いた。幽霊に妖夢をあずけて・・・と。
鈴「・・・さて、私も帰るとしますか」
妖夢は決してパワーヒッターというわけではない。現にここまで(7/27)の本塁打数は0。
シーズン途中から特訓をしたところで劇的に打力が伸びることはないだろう。
しかし
鈴「動かない事には始まらないわよね。幸か不幸か妖夢も私も今は二軍・・・時間はそれなりにある。
次の一軍昇格のチャンスまでに何かホームランを打てる工夫を考えておかないと」
今、鈴仙と妖夢の一大(?)プロジェクトが、幕を開けようとしていた───!
鈴「お、ちょっとカッコよかったかな?今の。・・・ただいまもどりm」
ヒュン(矢がかすめる音)
永琳「あら・・・おかえりなさいウドンゲ。
できればこんな遅くまで連絡もなしにブラブラしていた事についての説明をお願いしたいのだけど」
笑顔の鬼がそこにいた・・・
鈴「し、師匠!?いや、違います!これには深いわけがありまして!!」
永「お し お き ね 」 SET SPELL CARD!
鈴「ギャァァァァァァァァァァ!」
てゐ「鈴仙ちゃんカッコわるいウサ♪」
うどみょん奮闘編
Q.ホームランを打つときに重要な事は?
鈴「・・・と聞いてみたのはいいけど・・・」
鈴「案の定。パワーパワーパワーetc・・・力だらけね。
努力。・・・まぁ必要ではあるけども。
ブレイン。考えて打てってか?
私へのお賽銭。てゐのか?巫女のか?・・・・・・両方か・・・
酒。なんというか・・・乙
めるぽ。ガッ。
カリスマ。天狗でも襲ってろ。
赤○。番組が違う!
IN。そもそもINってなにさ!!
橙。そりゃあんただけだ!!!」
役に立ちませんでした←結論。聞いた人たちが悪かった・・・私のアホ・・・
鈴「・・・でも、一つだけ見つけたよ」
これなら妖夢にも実践できるかもしれない。
鈴「先が長い冬や春はもう過ぎたんだ。努力すればいつか叶うなんて悠長なことも言ってられない。
私はこの人の理論を信じてみよう・・・」
翌日、私は妖夢を連れて上白沢塾へ赴いた・・・
慧音「なんだ?ホームランってお前が打ちたいんじゃなかったのか?」
鈴「まぁそれは私の仕事じゃないですから。ご教授いただきたいのはこっちにですよ」
妖「れ、鈴仙。いきなりどうしたんだ?」
鈴「打ちたいんでしょ?ホームラン」
妖「そ、そりゃ打ちたいとは前から思ってたけど・・・鈴仙なんでそれ知ってるの?」
鈴「いっとくが驚かねーぞ?酒で潰れて記憶飛ぶなんて王道すぎるからな・・・」
妖「・・・本気で何を言ってる鈴仙?」
慧「・・・で、何をしに来たんだお前ら・・・」
鈴「そらホームランよ。・・・じゃなくて、ホームランを打つ際に大事なコトを是非!」
慧「・・・お前らはホームランを打つときに一番重要なことは何だと思う?」
妖「・・・やはりパワーだと思います。吸血鬼姉妹や妹紅さんを見てると尚更」
慧「では妹紅よりもはるかに力では勝る伊吹の鬼や同等の力を持つお前の主人はもっとホームランを打ってるはずだが?」
妖「そ、それは二人とも打席が少ないからで・・・」
慧「打席が少ないから。といって1本もホームランを打てない理由になるのか?」
妖「ゔ・・・」
慧「・・・私はホームランを打つ一番の秘訣はタイミングだと思っている」
妖「タイミング・・・ですか?」
慧「ジャストミート。とよく耳にするだろう?あの打球は真芯で捉えているから勢いがある。
角度が少し上に向けばホームランにもなる。いくら力があってもバットがずれていたら凡打にしかならない。
要は球筋を見極め綺麗に打つことが大事なんだ」
妖夢は目を丸くしていた・・・そして熱心に慧音の話を聞いていた。
私に心を読む程度の能力は無いけど、多分こう思ってるんじゃないかな・・・
妖・鈴「「私にも・・・ホームランが打てる?」」
妖「あれ?鈴仙もやっぱホームラン打ちたいのか?」
鈴「(・・・ホントにそう思ってたとは)ま、まぁ打てるんなら消化試合あたりに1本狙ってみてもいいかな~・・・なんて」
けーね「その点妹紅の打ち方は美しいな・・・脇のしめ方、重心の位置、バットコントロール・・・
すべてが完璧だ・・・そしてあのりりしい表情・・・適度に引き締まったふともも・・・
い、いかん・・・想像しただけで鼻血が」
妖「なるほど!つまり妹紅さんのフォームを見習えば私もホームランが打てるようになるんですね!?」
け「もこー・・・もこー!もこおおおおおおおおおおおおおおおおお(ry」
ハクタクが鼻血を噴いて絶頂した時には既に二人の姿は無かったという。
鈴「ハイ、これ教科書ね」
妖「なんだコレ?」
鈴「阿求から借りた本よ。ぶっ通しで練習してたら体壊すでしょ?
でも休んでる時間も勿体無いし、体休ませてる時は頭を働かせるってワケね」
妖「著者・・・かすれて見えないな・・・リーンマン?聞いたことないんだが・・・」
鈴「大丈夫大丈夫。稗田阿求御用達だから」
妖「タイトル『未熟者でも分かる 図解!バッティングフォーム』・・・なんかあからさまに喧嘩売られてる気がするんだが・・・」
鈴「いいからいいから。私を信じて♪」
妖「あまり信じたくなくなったんだが・・・でもやるよ
鈴仙がここまでしてくれたんだ。それに答えるためにも・・・私はホームランを打ってみせる!」
鈴「その意気よ妖夢」
その日からの妖夢には鬼気迫るものを感じた。日々の鍛錬に加え通常の3倍の素振りでスイングスピードのアップに努め、
休みを惜しんでフォームのチェックを繰り返した。・・・そして
鈴「妖夢いるー?」
幽々子「あらあら。蓬莱人の使いじゃない?何か用?」
鈴「ああ、幽々子さんにも連絡ですよ。私たち、3人とも一軍昇格だそうです」
幽「ふーん。大丈夫なのかしらねぇ」
鈴「何がです?」
幽「妖夢よ~。何か良からぬことをやってるんでしょ?試合ちゃんとでれるのかしら?」
鈴「・・・大丈夫ですよ。妖夢の努力はきっとファンも分かってくれます。
そして結果もきっと出ると私は信じてますから」
幽「うふふ。貴女達いつの間にそんなお近づきになったのかしら?今何処まで進んでるの?」
鈴「・・・とりあえずなんでもかんでもカップリングにしちゃう発想は一旦止めませんか?」
結論から言うと妖夢は昇格後いきなり7番スタメンだった。私は相変わらずベンチスタートだったけど・・・
アリスから何か言われてたけど、それでも黙々とバッティング練習をしていた。
鈴「妖夢。大丈夫?疲れてない?」
妖「正直疲れてないってのは嘘だな・・・結構あちこちガタガタだよ」
鈴「ほんとに大丈夫?今日はスタメンから外してもらった方がいいんじゃ・・・」
妖「心配は無用だ。与えられたチャンスは・・・必ず活かしてみせる」
私の心配を他所に妖夢は守備についた。大丈夫よね・・・妖夢あれだけ頑張ったもんね・・・
以下幻想郷タートルズ対広島東洋カープ(8/10)の試合経過をdat落ちした実況スレでご想像ください。
dat落ち:亀専1 打てよしらたま (1001)
dat落ち:未熟者専(み^ω^) (71)
dat落ち:魂魄妖夢が謝るスレ (52)
dat落ち:亀専5 未熟者好守 (1001)
dat落ち:黒田博樹の完全試合を見守るスレ (49)
dat落ち:黒田・霊夢「7回無失点の何がアカンのですか!」(26)
dat落ち:空気の読めない未熟者がいるらしい (40)
dat落ち:K.Y.妖夢wwwwwwwwwwww (8)
dat落ち:亀専7 完熟者や! (1001)
dat落ち:魂魄妖夢に謝るスレ (177)
dat落ち:未熟者に完全試合を阻止される球団があるらしい (22)
dat落ち:代 打 幽 々 子 (25)
dat落ち:9回1失点12奪三振なのに勝てない先発が (68)
dat落ち:亀専 祝勝会&プチ反省会会場 (1001)
◇
鈴「というお話だったのさ」
妖「誰に向かって話している鈴仙」
鈴「まぁ気にしないで。それより今日はよかったじゃない。あのヒットが無けりゃ負けてたかもよ?」
妖「ハハ・・・その前は2三振だったけどな」
場面は9回。ここまで無安打無四球に抑えられていた黒田から妖夢は直球を弾き返した。
ライトオーバーツーベース。その後代打幽々子さんの勝ち越しタイムリーで均衡を破り、9回は紫さんで逃げ切った。
妖「あの感触が・・・ジャストミートっていうのかな。角度があったらいけそうだったんだがなぁ」
鈴「ハハ。幻想郷スタジアムなら入ってたー。ってやつ?」
妖「いや、市民球場の方が狭いから」
鈴「そーだったーー♪」
妖「鈴仙・・・酔ってる?」
鈴「(ま、とりあえず元気は取り戻せたかな・・・)」
以前屋台に来たときのもやっとした波長は今は無い。活躍できた事で少しは気が楽になったのだろう。
・・・が今の妖夢からは別の波長が感じられる。それは
妖「・・・でもまだホームランは打ててないんだよなぁ」
鈴「あー。その事だけどね。妖夢」
妖「なんだ?」
鈴「あんまり色気を出しすぎてホームランだけ狙うようにしてもダメよ?
それで凡打繰り返してしまったらまたベンチ待機に戻っちゃうかもだし」
妖「う・・・それは・・・」
鈴「ご、ごめん!水を差すようなこといって。妖夢は頑張ってたのに」
妖「いや、いいんだ。むしろありがとう」
鈴「へ?」
妖「私の本来の役目はホームランを打つことじゃないからな。確実に打ち出塁し後のスラッガーに繋ぐ。
・・・まぁ今は下位だから上位打線へだな。ちょっと成果があったからといって舞い上がっていたよ。
もっと精進しないとなぁ」
鈴「妖夢・・・」
妖「でも、私はまだ諦めてないよ。このペナントで一本は絶対打ってみせるさ」
鈴「うん。とにかく頑張って、妖夢!」
妖「というか・・・鈴仙もボヤボヤしてると本気で二軍幽閉になるんじゃないか?」
鈴「それは思ってても言わないでぇぇぇぇ」
そういえば妖夢の悩みを解決するように尽力してきたが私の悩みは全然解決の方向に向かっていない件。
己の頭の蝿を追え。ということわざがあるらしいが・・・二軍にいた頃の私に小一時間ほど言い聞かせてやりたい気分だ・・・
そんなこんなで次の日の試合───
───8月11日土曜日 対広島東洋カープ
魔理沙「あの亡霊をスタメンで使うって?」
アリス「ええ、昨日の活躍もあるし・・・何より今日の先発は多分左の高橋建だからね」
魔「ま、妥当か・・・しかし妹紅も7月の勢いが完全に無くなっちまったな」
ア「彼女は良くやってくれたわよ。それよりも貴女。今日はしっかり抑えて頂戴よ?」
魔「ふん。誰に向かって言ってる?今日も最強左腕が敵地広島市民球場で大爆発だぜ!
ここの球場は狭いしそろそろ私もホームラン狙ってみるかな?」
ア「ハイハイ。期待してるわよ。さて、そろそろスターティングメンバー発表ね」
1射命丸(中) 2咲夜(遊) 3レミリア(右) 4フラン(左) 5藍(三) 6幽々子(一) 7妖夢(二) 8輝夜(捕) 9魔理沙(投)
タートルズのスタメンは以上の通り。三塁側内野席からは
「おぜうさまー!」「\射命丸/」「ゆゆ様ー!今日も打ってくれー」「フランちゃーん!」
と様々な応援が飛び交っている。レフトスタンドからも何人か応援を送っているな。
ア「さ、今日も勝って3連勝と行くわよ。」
魔「ところでアリス」
ア「何よ?」
魔「相手さんの9番打者を見てくれ。これをどう思う」
1梵(遊) 2東出(二) 3緒方(中) 4新井(三) 5前田(左) 6嶋(右) 7栗原(一) 8倉(捕) 9大竹(投)
ア「あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
魔「なんか前にもあったな。こんなやりとり」
相手が読んでいたかどうか定かではないが予想に反して出てきた先発は右腕だった。
こういう時ウチの選手層の厚さを活かし思い切って幽々子さんを小町さんに交代する。
・・・ということも可能なのだが
鈴「その場合妖夢も代えなきゃだめだしなー」
妖「そりゃ私が二塁を守るのは幽々子様を守ることも兼ねているからな。
幽々子さまがいないと二塁守る意味もあまりないし」
鈴「(そのみょんな制限が無けりゃもっと活躍の機会もあると思うんだけどなぁ・・・)」
そんなこともあって先発を読み違えても簡単に代えたりできない我らがタートルズであった。と。
例によって途中までの試合経過はdat落ちした実況スレでご想像ください。
dat落ち:亀専1 大ケケ? (1001)
dat落ち:魔理ンゴwwwwwwwwwwwwwww (31)
dat落ち:今魔理沙ピンチだけど神貫禄でチェンジだから (203)
dat落ち:亀戦で飛んでくるナイフについて (211)
dat落ち:亀専3 しらたまといっしょ (1001)
dat落ち:妹 紅 待 望 論 (3)
dat落ち:もうこいつ野手転向しろよ! (41)
鈴「相変わらず立ち上がりが悪いなぁ・・・」
連打を浴びて点を取られたのは初回のみでその後は完封している。
そして自身のバットで2点を返して今2対4。はやく追加点を挙げ逆転までもっていきたい。
と誰もが思っていた6回裏に悲劇は起こった・・・
実況「ツーアウトランナー無し。バッター栗原に魔理沙第1球を・・・投げた
打った!しかしこれはレフトフライになりそうか。レフトフランドール下がる、下がる?まだ下がる!
意外と伸びているぞ!?フランドール今フェンスに背をつけた!そして打球に向かってジャーンプ!捕れないーーーーーーッ!
入ったぁぁぁぁぁぁぁ!ソロホーーーーームラーーーーーン!!」
2アウトランナー無しからのフェンスギリギリのホームラン。(あとで姫様は市民ムランとか言ってた)
風にうまく打球がのったのとレフトフランの背の低さが招いた不運としかいいようのないホームランだった。
しかしホームランはホームラン。これで2対5。なお魔理沙は次の打者を三振で仕留めてこれでチェンジ。
魔「ちっくしょう!なんであんなのが入るんだよこの球場!」(ガッシャーン)
ア「でもいつもの球威だったらあそこまで飛んでないわよ?今日はここまでね。」
魔「うう~。悔いが残るぜ・・・あ、そうだ!」
ア「はいはい。打席が回ったら打たせてあげるわよ」
魔「へへっ。話がわかって助かるぜ」
ア「言っても聞かないくせに」
◆
妖「うーん。やっぱ形はどうあれホームランっていいよなぁ・・・」
ネクストバッターズサークルで私は呟いていた。
妖「私もここならさっきみたいなのでいいから打てないかなぁ・・・そんでもって・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
実況「打ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
やったぞ妖夢!
やったぞ妖夢!
幽々子がやるなら私もやる!
これがほんとのサムライだ!
こんな妖夢が見たかった!
こんな妖夢が見たかった!!
今日は笑っていいぞ! 踊っていいぞ!
喜んでいいぞ魂魄妖夢ーーーッ!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
○
。
妖「とかあの実況天狗に言わせてみたいなぁ(2828)」
カキーーン!!
妖「え?」
実況「入ったぁぁぁぁ!ノーアウト一塁から6番幽々子、今シーズン第1号のホームラーーーン!
ついに眠っていた長距離砲が目を覚ましたァーーーーーーッ!!」
変な妄想に浸ってる間に幽々子様がホームランを打ったみたいだった。
ああ、今最高に輝いてます幽々子様!見てなくてスミマセン幽々子様!
幽「ハイ。ホームインっと。これで1点差ねー」
藍「幽々子様お見事です」
そういってハイタッチを交わす二人。
妖「幽々子様ー!お見事でした!!」
幽「うふふ。従者に先にホームランを打たれたら面目丸つぶれだからねー」
妖「え?」
幽「じゃ、妖夢もがんばってねー」
そういって幽々子様はベンチへと下がっていった。ベンチの仲間ともハイタッチを交わしている。
私がホームラン打ちたいって事。幽々子様には言ってなかったはずだけど・・・
ちなみにこの打席の私はセカンドゴロだった。あ、魔理沙は豪快に三振でした。
◇
幽々子さんのホームランで追撃ムードの私たち。8回表、さらに衝撃的なシーンを目の当たりにした。
実況「打った!飛距離はありそうだ!ライトはもう見上げている!ポールの右か?左か?直撃だーーーーーッ!
十六夜咲夜代わったばかりの横山から同点となる値千金の4号ホームラーーーーーン!!!」
鈴「嘘!?すごい!同点になっちゃった!」
妖「・・・」
鈴「妖夢?」
妖「今の打球。打った瞬間スタンドまで行くとわかった。あれが・・・ジャストミート。ということか・・・」
鈴「妖夢・・・」
妖「あ、ゴメン鈴仙。何か言った?」
鈴「ん。なんでもないわ。さ、一気に逆転しましょ!」
妖「ああ、そうだな!」
が、その後が続かず逆転のチャンスは9回表に持ち越しとなった。
9回表は先頭打者の藍さんがヒットで出塁。いきなり勝ち越し点のチャンスを作った。
鈴「この回・・・妖夢に回るわね・・・」
◆
妖「幽々子様!頑張ってください!」
幽「ん。まかせなさい♪」
バッターアウッ
妖「幽々子様・・・」
幽「後は任せたわね妖夢~」
幽々子様・・・三塁側からしらたま乙って声が聞こえてますが・・・
て、お客さんも!さっきのホームランもう忘れちゃったていうのかぁぁぁ!
妖「・・・いいさ。なら私が打って白玉楼ここに在り!という事を思い知らせるのみ!魂魄妖夢、推して参る!」
ウグイス嬢「タートルズ。選手の交代をお知らせします」
妖「・・・・・・」
現実とは非情である。まぁ、まだ小町さんや妹紅さんがいるもんな・・・今日の私はここまで・・・か・・・
ウグイス嬢「ファーストランナー、藍に代わりまして───」
妖「え?」
ウグイス嬢「鈴仙。ファーストランナー、鈴仙」
妖「タ、ターーイム!!」
私はタイムをかけて鈴仙の元へ走っていった。何故このタイミングで?
しかも藍さんに交代?そんなことしたら紫様が投げれなくなることは鈴仙もわかってるはずなのに!
妖「ちょっと鈴仙!どういうこと!?」
鈴「ん~。魔理沙からかき回して来い!って言われたわね」
妖「じゃ な く て !藍さんを代えたらどうなるか鈴仙だって知ってるでしょ!?」
鈴「まだリリカや豊穣神がいるから気にすんな。って一蹴されたねー」
妖「だ、だからって」
鈴「ホラ。さっさと打席にいきな。ホームラン狙ってみてもいいわよー」
ア「・・・で、失敗したら私たち延長戦キツいわよ?大丈夫なの?」
魔「ま、相手さん困惑してるな。いけるかもしれんぜ?」
ア「・・・何が狙いよ?」
魔「走塁センスの優れる鈴仙を一塁に置く事で投手の意識をランナーにも向ける。
そしてこの選手交代の意味を探らせることで意識をこっちにも向ける。
こうすることでみょん子でもスタンドインを狙えるって寸法だぜ」
ア「あなた・・・妖夢がホームランを打てると本気で思ってるの?」
魔「ん?信じられねーか?私は一軍に上がってきたアイツのバッティングから
何かただならぬものを感じてたからこの作戦を思いついたんだが・・・
ちょうどここは市民球場だしな。みょん子はホームランを打つね。間違いない」
ア「・・・繋いで次に妹紅か小町を代打で出した方が確実だと思うけどね」
魔「私の勘が信じられないってか?なら賭けるか?みょん子がホームランを打つ打たないに。私が勝ったら魔道書10冊な」
ア「アラ、あなたが負けたら何をしてくれるのかしら?」
魔「ハハハ。ありえないけどな。そうだな・・・目でピーナッツでも噛むか?なーんてなw」
ア「なによそれ・・・てか私勝っても全然嬉しくないんだけど・・・」
主審「プレイッ!」
妖「(あんな風に言ってたけど・・・この発案。魔理沙の考えだけじゃないんでしょ?鈴仙)」
鈴「(妖夢・・・球をしっかり見て・・・ピッチャーは私がかき回してみせる・・・今の貴女ならできるわ!)」
妖「(私は幸せ者だ・・・こんなに私のことを思ってくれる友人を持つことができて・・・)」
鈴「(よし。ピッチャーの意識は私に向きかけている。・・・あとは貴女次第よ)」
妖「(今この一時だけは・・・私は幽々子様のために、タートルズのためにバットを振らない・・・)」
鈴「(今の妖夢に雑念は一切無い・・・いける!)」
妖「(この一打は私のため・・・)」
実況「ピッチャー横山。第1球を───」
妖「(そして、親友鈴仙のために・・・この球を───)」
実況「投げたッ!」
妖「打つ!!」
鈴「行けぇぇぇ!妖夢ーーーー!!!」
キィン!
実況「初球ジャストミートォ!ライト方向これは大きいっ!入れば逆転!入れば逆転だ!!どうだ!?入るかッ?入るかーーッ!!!」
妖「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
ファール!
実況「いや、右に切れたファーーーーーーール!あと数センチ足りなかったぁぁぁぁぁ!!
今のは入ってませんでしたか?」
解説「うーーん。ボクは入ったと思ったんですがねぇ」
実況「そしてレフトスタンドも大きなブーイング。と、おや?バッターボックスの様子がおかしいですね」
妖「ちょっと待ってください!今の入ってなかったですか!?」
主審「いや、若干右だったな」
妖「そんなこと無いです!入ってたはずです!!確認させてください!」
主審「その必要は無い。インプレー中だ。はやく打席に戻りなさい」
ア「ちょっと、妖夢!何やってるの!?」
鈴「タイム。・・・妖夢、落ち着いて!それ以上は───」
妖「今のは絶対入ってました・・・入ってたはずなんです。お願いです!せめて確認だけでも」
主審「しつこいぞ。これ以上は遅延行為t」
妖「そんなことはどうでもいいんです!とにかく確認させてください!!」
ア「妖夢!!やめて!」
鈴「妖夢!」
主審「・・・退場!!」
ア「な!」 魔「へ?」 鈴「!」 幽「・・・」
妖「・・・・・・あ」
実況「あっと。退場です。今、妖夢選手に退場が宣告されました。」
解説「うーん、多分今のは入ってたとアピールしてたと思うんですが・・・ちょっと感傷的になりすぎていましたねぇ」
◇
主審がマイクを使い妖夢の退場処分が観客に発表された。私は妖夢がベンチに下がっていくのをただ見ているしかなかった・・・
魔「・・・・・・・・・」
ア「・・・確か目でピーナッツを噛むんだったかしら?」
魔「いや、無効だ!こんなの無効に決まってるだろ!!」
◆
妖「球場の方が沸いてるな・・・試合。動いたのかな?」
ロッカールームで私は呟いた。あの後何も考えられなくて・・・ただどこか一人になれるところを探していた・・・
何をやっている魂魄妖夢・・・
あれだけ鈴仙が頑張ってくれたのに・・・
アリスも、藍さんを下げてまでお膳立てをしてくれたのに・・・
結局私ができたことはなんだ?
ホームランを打つことだけ考えてて・・・チームの迷惑も省みずにあんなことを・・・
幽「あらあら、ここにいたの?妖夢」
妖「ゆ、ゆこ様・・・試合は」
幽「延長11回。幽々子選手勝ち越しタイムリー♪・・・で代走出されてお役御免ってね」
さっきの歓声はそれだったか。
幽「惜しかったわねー。あと左に何寸だったかしら?それとも審判の目が節穴だったのかしらね」
妖「・・・・・・」
幽「でも審判に文句言っちゃダメよー?野球のルールだとあの人たちは神様らしいからね」
妖「・・・・・・はぃ」
幽「あらあら。代走を出したのに結局追加点は無しか。ま、紫は使えないけど後はあの騒霊がなんとか抑えるでしょ」
妖「・・・・・・」
幽「さて、と。妖夢。何か言いたいことはある?」
妖「・・・・・・私・・・わだじ!」
幽「ごめんなさいね。貴女がそこまで悩んでた事に気づかないで。主人失格だわ」
妖「私・・・自分のごどじか・・・考えでなくて・・・
鈴仙も・・・あんなにめいばぐ・・・かけたのに・・・
けっぎょく・・・だべなままで・・・なにも・・・でぎなぐて・・・」
涙が止まらなかった。未熟すぎる自分に対して・・・何もかも情けなくて・・・泣く事しかできなかった。
幽「・・・鍛錬は裏切らない」
妖「・・・え?」
幽「妖忌によく言われてたのよ。昔稽古をサボりがちだった私は。
その時はやかましい指南だな。と思ってたけど・・・正直私は今の妖夢を見て
やっぱり妖忌は口五月蝿いけど正論を言ってたんだなーって思うわね」
妖「・・・」
幽「昨日今日のプレーを見てびっくりしたわー。
あの妖夢があんなに鋭い打球を飛ばせるようになるなんてねぇ。
言葉は悪いんですけどI☆GA☆Iだったわー。なんてね」
妖「でも・・・」
幽「・・・貴女に今できることはこれからも打ち続けることよ。
鍛錬の成果が昨日今日だけだったら、妖忌がいい加減な事を言ってた。ってことになるでしょ?
私は思い出の中の妖忌をかっこ悪くしたくないの。だから、
その鍛錬が無駄でなかった事を証明するくらい・・・
今日のミスがスキマ送りになるくらい・・・
打って、打って、打ち続けなさい。これは命令よ」
妖「・・・」
幽「・・・復唱が聞こえないわね?」
妖「・・・御意・・・・・・」
実況「打ち上げたーッ!これは平凡なセカンドフライ!鈴仙ゆっくり下がって落下点に入り・・・捕りました。アウト!
ゲームセットです!タートルズ。6対5で勝利!三連勝を飾りました!」
◇
迷いの竹林。人間の里から見て妖怪の山の正反対に位置する竹林。その竹林の中に人目を避けるかのようにひっそりとその屋敷は存在する。
屋敷の名前は永遠亭。みなさんこんにちは。鈴仙です。あれから随分経ちました。あれ以来妖夢がホームランに固執する事は無くなったけど・・・
それでもあの打撃練習の成果か、出塁率が上がって違った形でチームに貢献しています。この調子なら本当にいつかホームランを打っちゃうかも。
私はというと・・・相変わらずベンチ要員です・・・美鈴さんがここに来て大ブレイクしています・・・
もはや完全に正二塁手は彼女のものと言ってもいいんじゃないでしょうか・・・鈴仙です・・・鈴仙です・・・
「何をそんなにしょげている鈴仙?」
ボブカットに緑の服。腰に刀をさげた少女が立っていた。
鈴「あ、こんにちは妖夢。何か御用?」
妖「ああ、うん。薬が欲しくて」
鈴「アレ?なんかデジャビュ?」
妖「何か言ったか?」
鈴「いや、なんでもないわ。幽々子さん用?」
妖「よくわかったな・・・その通りだ」
鈴「そりゃ貴女からは病の気は感じられないからねー。で、また食べ過ぎ?」
妖「いや、食べ過ぎじゃないんだ」
鈴「あら?じゃあ風邪?季節の変わり目だし」
妖「風邪なんかでも・・・ないんだ・・・」
鈴「・・・外傷でも無いわよね。流れ的に・・・」
妖「うん・・・怪我でも・・・ない」
鈴「・・・妖夢。私はもう何も驚かないわ。さ、病名を教えて頂戴」
妖「・・・・・・・・・・背筋痛」
背筋痛になる亡霊がいるらしい (178)
師匠・・・あの球場は恐ろしいです・・・
Fin